ベトナムにいて日本との違いはなんだろうとよく考えていました。
たくさんあるんですが、一言でいうと全体最適と個別最適の違いかなと思いました。道路の交差点の様子が顕著ですね。とにかく我先にと割り込んでいく、いやいやそこの前の人を先に行かせたほうが効率的じゃん、あの人もハッピー、君だってわざわざその狭いところに割り込んでいってぶつかるリスクもないし結果的に君も早く進むことになってハッピーだと思うよ。と、ベトナムでは必須のGrabバイクに乗るたびに思うのですが、残念ながらそれを彼らに伝える術を持ちません(ドライバーで簡単な英語でも話せる人は稀です。いまさらですが、Grabのドライバーとのチャットアプリは翻訳機能がついてるので、それでコメントすることはできたことに今気づきました)。
とにかく、今の自分の視点だけで行動される方が多い。空間的な視野の狭さと時間的な視野の狭さ。
一方、日本は朝の通勤電車の列にきれいに並ぶ姿や球技場でサッカーの試合が終わったあとにちゃんとゴミを拾って帰るなど、常に全体の利益を重視する。平等に先に来てた人から順に電車に乗れて、電車が定時運行できる。ゴミ持って帰れば、また次もきれな球技場でサッカー観れる、あるいは掃除のための人件費を抑制できてチケットが安くなるかも(日本には安い労働力がない)。
見方をかえると、みんなが平等に不利益を被ることへの耐性はあるけど、自分だけが損をするのは嫌だし、あの人だけが得をするのも許せない。全体最適を考えれば明らかにこういう判断がされて然るべきなのに、自分がその犠牲を払う当事者になると受け入れられない。昨日、たまたまニュースで見かけた都内の道路整備、都市整備が戦後75年経過しても進んでないところがあるという話とかは顕著です。
ベトナムではこのあたりの感覚はちょっと違っているように思います。人は人、自分は自分とはっきりと分けて捉えていて、他の人と比べて自分がどうであるかはあまり気にしていない。最近、日本でも貧富の差が問題になりますが、それとは比べられないほどの貧富の差がベトナムにはありますが、そういうもんであると社会全体が捉えているように感じられます(日本人の私にはなかなか受け入れづらいところでもあります)。社会主義の国なのに不思議な感じもしますが…
仕事の面では、やはり全体を見据えた積極的な行動は乏しいですが、自分の仕事に対する責任感はとても強い人は多いように思います。なので、マネージャーが全体を見据えた計画、設計をして人を配置し、管理できればとてもよい成果につながる。プロジェクトの成否はマネージャー次第、オフショア開発でいえばマネージャーを兼ねるいわゆるブリッジSEの能力に依存してしまうわけです。また、高い給料をもらおうと思うとマネージャーにならないとダメなので、キャリアパスとしてエンジニアを含めてみなマネージャーを目指します。さらには、優秀なマネージャーの給料はどんどん高くなり、こういうところから貧富の差が大きくなっていきます。貧富の差は能力(と努力)の差だから仕方ないと思っているのかもしれません(聞いたことないのでわかりません)。
ソフトウェア開発においては、少なくとも以前は他への影響や将来の変化を予想した全体最適されたシステム設計・実装が望まれていたのは間違いないでしょう。一方でベトナムではそもそも人への関心が少ないのですから、オフショア開発において遠い海の向こうの顧客、ユーザーが使うソフトウェアやシステムにオフショア先のエンジニアが関心を持つわけがない。顧客から言われたとおりに、自分は関心のないソフトウェアを作るわけですから、なかなかうまくいきませんよね。
(変化が激しく、多様な世界となって、これまでの全体最適が最善ではあり続けないことについてはまた次の機会に)
これがだいぶ偏見に満ちたベトナムの感想なのですが、仮に偏見でないとしても一般論でしかなく、ベトナム人全員が同じではなく結局は人によって違うわけです。
当たり前ですが、とても広い視野で判断、行動できる人もいらっしゃる。ただそういう人が活躍できる場が限られている。例えばエンジニアにそういう行動はそもそも求められておらず、マネージャーの指示に従って自分の仕事を愚直にこなすことが評価される。無能なマネージャであっても上下関係は絶対です。
もし、エンジニアが幅広い視点を持って、自ら考え、行動し、それがチーム、プロジェクトの成果に繋がり、顧客や組織から評価される。そんな場があればエンジニアにとって、また顧客にとってもしあわせなことではないか。そもそも、大学でコンピューターサイエンスを学んだようなエンジニアは論理的な思考力を持っており、全体最適の視点も持てるはずです。ただ、プログラミングやシステム設計において全体最適の視点で考えられてもそれにとどまっていたり、権限が与えられておらず活かされてないだけではないか。
逆にいえば、組織内の上下関係や顧客との取引関係ではなく、また個でもなく、チーム/プロジェクトとして常に最善の策を考え、判断し、行動できるなら、エンジニアにとって魅力的でより多くのエンジニアが集ってくるのではないか。
atWare Vietnam はそんな組織でありたい。
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